多聞くん今どっち!? 第1巻のあらすじと感想
※各話の展開に触れています。
この巻の概要
推しの福原多聞を応援する高校生・木下うたげは、ファン活動の資金を得るため家事代行のアルバイトを始めます。ある日、欠員の代役として向かった家で多聞と出会いますが、そこにいたのはステージの輝きとは違い、自信をなくした「ジメ原さん」。うたげは戸惑いながらも、多聞が目指すアイドル像をファンとして支え、二人は家事代行と推し活が同居する時間を重ねていきます。
各話のあらすじと見どころ
第1話(3〜52ページ)
木下うたげは、多聞を熱心に応援する17歳の高校生です。推しを応援するにはお金が要ると、条件のよい家事代行のアルバイトを始め、仕事にも慣れてきました。ある日、欠員の代役として訪れた家で、うたげは推しの多聞と初めて対面します。けれど家で見る多聞は、ステージの華やかさとは違って自信なさげ。別人のような彼の様子にうたげは戸惑いながらも、多聞が「世界中を笑顔にしたい」と願っていることを知り、その理想をファンとして応援します。最後に多聞が隣で自分を推してほしいと告げる場面は、ファンとアイドルの関係を保ちながら、彼女にそばにいてほしい気持ちものぞかせます。
第2話(53〜94ページ)
握手会に出かけたうたげは、会場でファン同士の争いに加わった末に参加券をなくし、多聞に会えませんでした。家事代行先で欠席の理由を尋ねられ、会場まで行ったものの途中で券を落としたと説明します。続けて、うたげは一瞬だけ自分だけの多聞を願い、多聞は「嫌です、一瞬なんて」と返します。ファンとしての願いが思わず口をついて出たあと、それを軽く受け流さない多聞の返答で二人の距離感が揺れるところが、この話の山場です。
第3話(95〜132ページ)
テレビ出演に向けて服を選びたい多聞は、うたげを誘って買い物へ。試着した服やコラボ企画を一緒に楽しむうちに、多聞は外出そのものにも新鮮さを感じます。うたげの友人に見つかりそうになると、彼女は多聞のプライベートを守るためにその場を離れます。最後に多聞が外出を楽しめたと伝える場面には、華やかな衣装を選ぶだけではない、二人で過ごした時間への素直な喜びが残ります。
第4話(133〜162ページ)
卵焼き作りに失敗した多聞は、料理の腕だけでなく自分まで責め、活動を控えようとします。うたげは、多聞がファンに笑顔を届けてきたことを改めて認めて励まし、彼は少しずつ立ち直ります。藤田マネージャーらと家事代行の範囲を話し合い、うたげは多聞の家事を続けて引き受けることに。ファンクラブ用の自撮りに悩む多聞は、自宅ではアイドルのスイッチが入らないと打ち明け、うたげに助けを求めます。終盤では多聞がうたげを「特別」だと伝え、彼女に褒めてもらいたかったと明かす。彼女の応援が多聞にとってどれほど大きいかが見えてくる場面です。
巻末企画「ファンサうちわの作り方講座」(164〜165ページ)
巻末には、ファンうちわを作る手順を紹介する2ページの企画もあります。文字や色をアプリで組み合わせる説明に、うたげらしい応援案や小ネタが重なり、彼女の推し活を最後まで楽しめます。
一巻を読んだ感想
卵焼きの失敗を前にした多聞が、料理の腕だけでなく自分の存在まで否定しかけるところには、思わず笑いつつ胸が詰まりました。そこでうたげが、彼の笑顔をファンへの贈り物として言い直す。派手な励ましではなく、彼が大切にしてきた理想をもう一度本人に返す言葉だから、効くのだと思います。
この巻で好きなのは、うたげが「近くにいられるファン」という立場に浮かれきらず、仕事としての線引きも気にしているところです。多聞の家にいる時間は特別でも、うたげは家事を担う側として振る舞おうとする。その慎重さがあるから、彼のアイドルらしい振る舞いも、素の弱さも、どちらかを嘘にせずに見ていられました。
第1話の「隣で推してほしい」という誘いを、第4話の「褒めてもらいたかった」という告白が思い返させます。私はこれを、恋愛の答えが出たというより、多聞がうたげの応援を必要としていることが少しずつ形になった瞬間として読みました。二人の関係がファンとアイドルのままどこまで近づけるのか、続きが気になる終わり方です。


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